日本自転車競技連盟(JCF)から発表された声明に対しての見解

ロード・トゥ・ラヴニール(RTA)が2024年6月6日に発表させて頂いた【2024年度「ツール・ド・ラヴニール」男子が不出場に至った経緯のご説明】リリースを受けての、自転車競技連盟(JCF)ロード部会による「ツール・ド・ラヴニール」派遣見送りに関する発表【ツール・ド・ラヴニール派遣に関して(6月10日)】を拝見致しました。

選手や関係者が長年期待しながら、JCFによる方針の具体案が対外的に明示されていなかった“ジュニアカテゴリー(17~18歳)からの育成をしっかりと行う”という大きな期待が持てるご意向について、RTAとしても心から賛同致します。

またこの度新たにJCFホームページに掲載された育成パスウェイ 2024年版骨子表についても、具体策は示されていないもののその方向性には大変共感致します。

*ご参考までに:下記表が2022年12月15日にRTAが発表した、”RTAパスウェイ骨子表”です

更なる詳細はRTAホームページ( https://www.rta-cycling.jp/ )をご覧いただけると幸いです。

<欧州勢からの遅れを取り戻す必要性>

近年、世界のプロ自転車ロードレースでは「新規プロ契約年齢の早期化」(18~19才からプロ契約する選手も目立ってきた)と、「若年選手の活躍」(UCIポイント獲得年齢分布によると、1990年代は28才がピークでしたが現在は26~27才へと変化)が目立ち、UCI世界自転車競技連合(以下UCI)ルールに則った形でUCIワールドチーム(世界トップカテゴリー)やUCIプロチーム(世界第2カテゴリー)は直轄の育成チームを組織するようになりました。それにより各チームでは才能を見せる若い選手をU19カテゴリー(18歳以下=ジュニア以下)から青田買いし、早期から自組織内に取り込もうとする傾向になっています。その組織内や傘下の育成チームとしてのU23(19~22才)チームも、UCIコンチネンタルチーム(世界第3カテゴリー)として登録される傾向です。
*メモ:2024年現在、18のUCIワールドチーム中、10チームが育成UCIコンチネンタルチームを所有。

多くの育成UCIコンチネンタルチーム&クラブチームは、欧州のUCI 2クラスまたは2Uクラス(U23限定、例えばLBL U23やピッコロ・ジロ・デ・イタリア等)を主戦場とする活動を通じ、若手選手の成長を促しています。これはUCIワールドツアー軸の育成ピラミッドと言えます。

しかしこの形に参加するチームの多くは、ロードレースの世界化が進んでいるとは言え、欧州のチームと選手に集中しております。
日本人にとってこのピラミッドに入り込むことは容易ではありません。
例えば、U19の国際大会での成績が無いと、UCIワールドチームの下部組織に入るのは現状では至難の業です。そして日本の高校生が春休みや夏休みをすべて費やして欧州へ挑戦しても、競技環境が整った欧州勢に対して優位に立つのは困難です。
この理由から、欧州勢からの遅れを取り戻すためにもU23の強化活動が日本の選手にはとても重要なのです。

UCIによる地域間レベルギャップの補正努力が行われている>

一方UCIは、世界選手権&大陸選手権の開催や、育成カテゴリーとされるU23とU19にて国別対抗、すなわちナショナルチーム対抗のUCIネイションズカップ(ツール・ド・ラヴニールを頂点とするシリーズ戦)をもう一つの育成ピラミッドとすることで、より広い国々から才能を発掘しようという取り組みを行っています。UCIはロード競技世界化の一環として、UCIネイションズカップでは基本的に1国1チーム出場を原則(招聘状況によっては埋まらない枠をクラブチームで補う事はある)としており、参加選手の国籍は自動的に多国に分散され、主力国でなくとも1名や少数の可能性を引き出すチャンスが与えられる事になります。

このような取り組みにより、UCIネイションズカップからは、カナダ、エクアドル、ルワンダ、エリトリア、ニュージーランド、そしてツール・ド・ラヴニール2023年の覇者イサーク・デルトロ(2024年からはUCIワールドチーム「UAEチームエミレーツ」所属)を擁するメキシコなど、チーム全体は力のバラつきがあっても、プロ選手が輩出されてゆくチャンスとなります。

さらに近年では、各大陸年代別UCIランキングからそれぞれ出場国を選ぶシステムにもなっており、ロードレースでの実力後進国にもチャンスを与えるという、UCIの方向性が更に強くなっています。

そしてツール・ド・ラヴニールはUCIネイションズカップの一戦です。その歴史と人気から最重要視はされていますが、「将来(ラヴニール)」に向けて多くの国から可能性を見出そうという考えは変わらないのです。

日本ではU23選手が国内のUCIコンチネンタルチームに所属する傾向が強くなっていますが、それらチームによる海外UCI国際レースへの出場は稀で、その遠征には23歳以上のエリート選手が主に派遣されています。

日本のUCIコンチネンタルチームではU23選手の強化を目的とした国際レースに参加が出来ない限り、ナショナルチームとしてのUCIネイションズカップ等への参加は、現状分散したU23選手の可能性を束ねて強化する方法としては唯一の活動です。

<最後に>

RTAでは、もちろん日本代表チームのツール・ド・ラヴニールへの参加協力だけではなく、世界と日本の現状を考慮し、RTAプロジェクトとしてパスウェイを具現化し必要な活動に取り組んでいます。

昨年の日本選手たちの活躍により、若い選手たちがツール・ド・ラヴニールを目標にし始めました。更に、昨年度大会に出場した選手は世界への手ごたえを感じ、今年の再挑戦に強い意欲を燃やしています。そんな中、RTAとしては今年も昨年通り、JCFへ人的、費用的負担をかけない形でのオーガナイズを提しましましたが、JCFロード部会として不参加の判断(=RTAによる受託提案を辞退+JCFによる男子チーム派遣見送り)を下したことは誠に残念です。

しかし、RTAとしては「日本ロード界が世界へ向かう為のプロジェクト」として認識頂けるよう、引き続き3つのルールに基づき7つの活動に取り組みます。これにより、強い日本代表チームの育成に貢献し、さらにプロ選手の輩出という目標に向かって努力を続けて参ります。

2024年6月11日
ロード・トゥ・ラヴニール(RTA)